2006年が開けて間もないある日。ブラッスリー銀座小松店に社長の山崎が前ぶれもなくやってきた。この会社では珍しくもないことだ。閉店間近の時間帯、店長の小出愛子はカウンター席に座る社長の横に腰掛け、問われるままに仕事のこと、店のことを話していた。
「ねえ社長、これからはもっと私たちを利用していったほうがいいですよ」
話題が女性のワークスタイルに及んだとき、小出は日頃の思いを込め、語り始めた。
「これまで何年も後輩の女性社員が入社してくるのを見てきたけれど、決して長続きしているとは言えないですよね。仕事を続けないのには理由があると思うんです」
ライオンは効率やマニュアルに支配されるのを好まない組織だ。店や個人の自由度が高い反面、個人の頑張りに依存する部分が大きい。男女の区別がないのはいいが、「一緒に頑張ろう」というやり方ばかりではついていけない。ライオンが女性マーケットに強くないのは、実はそんな体質が問題なのではないか。女性を上手に活かせる企業にならないと、成長も望めないと思う。
じっと耳を傾けていた山崎は、小出の話が途切れると言った。
「実はオレもそう思っていたんだよ。小出さん、それ、プロジェクトとしてすぐにやってくれないかな」
言いだした者が主役になる。これもこの会社では珍しくないこと。2006年4月には、早くもプロジェクトがスタートした。
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